タクシー事業の安全及び接遇

東京でタクシー乗務員になるには、東京タクシーセンターが行っている「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」に合格しなけれないけません。

この試験は、「東京特定指定地域(特別区、武蔵野市及び三鷹市)に係る地理」(通称「地理試験」)、「タクシー事業に係る法令、安全及び接遇」の2科目があり、それぞれ午前と午後に分けて実施されます。

「地理試験」は、東京にお住まいの方であれば勉強しなくてもいい場合があるかもしれませんが、法律や安全に関する知識は意外と知らないことが多くあります。

しかし、むずかしいことは一切ありません!

普通免許を持っている方であれば「常識」であることや、一般的な社会人が持っている感覚がそのまま法律や安全にも反映されているので、「普通の大人」であれば簡単に答えられる問題ばかりだからです。

ただ「引っ掛け問題」も何問かあるので、細かい文言や数字(例えば「11人未満」「40日以上」「2年」など)を事前に確認しておいたほうが良いでしょう。

このページでは、頻出する安全や接遇に関する事項をピックアップし、引っ掛け問題の対象になりやすい文言・数字を赤色で示しました。

受験当日の電車の中での再確認などにご活用ください!

 

 

 

目次

安全

運転等の技能及び知識

シートベルトの着用

・シートベルトを運転者が正しく着用することで、事故の被害を軽減できるだけなく、正しい姿勢を保つことにより、疲労軽減にもつながる。

・交通事故の致死率は、シートベルトの着用の有無により極めて大きな差が出ており、運転席、助手席においては致死率が大きく異なっている。

 

 

 

運転時の留意事項

道路状況に応じた運転

坂道では、平坦な道路よりも車間距離を長くとる。

 

夜間の運転

・夜間の運転は、視界が悪くなり、状況把握が困難になる。
 したがって、速度感覚が鈍るため、速度超過になりがちである。

・夜間は昼間に比べて運転環境が数段と悪くなることを十分に自覚するとともに、早めに前照灯をつけるようにすることが大切である。

・夜間の運転は、他の車両や運転者や歩行者の行動が昼間と異なることが予想されるため、昼間の運転よりも慎重さが要求される。

・夜間の運転において、自車と対向車の前照灯交差により、道路中央付近にいる歩行者の姿が見えにくくなる。
 この現象を「蒸発現象」という。

・対向車の前照灯の光が眩しいときは、視点をやや左方向に移すことで幻惑を防ぎやすい。

 

 

雨天や霧などの不良気象条件下での運転

・雨天時の運転は、道路が滑りやすく制動距離も長くなり、横滑りや高速走行時の「ハイドロプレーニング現象」など、晴天時とは異なる現象が起きやすい。

・霧の場合の運転では、歩行者も運転者も視界が狭くなるため、前部霧灯(フォグランプ)や前照灯をつけ、速度を落とすなど、事故防止により注意が必要である。

 

 

子どもと高齢者に対する注意

・子どもの視野は大人より狭く、車が接近しても気づかないことがある。

・子どもの特性として、車は急に止まれないことがわからず、手を上げてすぐに横断することがある。

・高齢者の行動特性として、若い人に比べ極端に歩行速度が遅いことがある。

・運転経験のない高齢者の場合は、自動車の特性や距離感、速度感覚がわからず、車の直前を横断したり、急に引き返したり、却(かえ)って危ない方向に行ったり、立ち止まったりすることがある。

 

 

携帯電話等の使用

走行中にカーナビゲーションの画面を注視してはいけない。

 

 

安全な速度と車間距離

・「空走距離」とは、運転者が危険を感じてからブレーキを踏み、ブレーキが実際に効きはじめるまでの間に車が走る距離のことをいう。

・運転者が疲れているときには、危険を察知して判断するまでに時間がかかるため、空走距離は長くなる。

・交通の状況や天候など、運転状況は日によってあるいは時間によって変わるが、不測の事態にあっても適切に対応できるよう、安全な速度と適切な車間距離による安全運転に努めなければならない。

 

 

交差点での留意事項

・交差点及び交差点付近での事故の発生率は、他の場所に比較して高くなっている。

・交差点での留意事項について、一時停止の標識があるところでは、停止線の上で一時停止し、徐行場所では徐行して左右の安全を確認する。

・信号機が青でも、注意を怠らない。

 

 

交通整理の行われていない交差点での留意事項

交通整理の行われていない交差点では、優先意識を持たず、譲り合いの気持ちを持つ。

 

 

高速道路での留意事項

・高速道路で、路面が雨で濡れており、タイヤが減っている場合は、時速100キロなら晴天時の約2倍にあたる200メートルの車間距離をとることが、安全のためには望ましい。

・高速走行に慣れてくると、次第に速度感覚が麻痺するため、一般道路に出るときには速度超過になりやすい。

・高速道路を走行した直後は、速度感覚が麻痺し速度超過になりやすいので、速度メーターを確認して安全な速度で走行する。

・高速道路でトンネルに入ると、急激に視力が低下するので、あらかじめ手前で速度を落とすようにする。

・トンネルの出口は、横風によってハンドルが取られることがあるので、注意する。

・高速道路での強風時は、ハンドルが取られやすいので、速度を落とす。

 

 

 

 

タクシー運転者として特に注意すべき事項

点呼の重要性

出庫時の点呼は、免許証の確認やアルコール検知器による検査、乗務に必要な情報の共有、運転者の健康状態の確認など、安全に乗務するために重要な役割を果たしている。

 

 

輸送の安全性の向上への取組み

タクシー運転者は、輸送の安全性向上のために、安全教育に関する研修や交通安全週間の行事など、事業者から指導があった場合には積極的に参加しなければならない。

 

 

営業区域の状態の把握

事故を防止するためには、営業区域内の道路事情や交通事故発生の危険性が高い場所等の情報を的確に把握しておくことが重要である。

 

 

乗客の安全確保

乗客の安全を確保するために、急発進、急停車、急ブレーキ、急ハンドルを避けるとともに、危険予測に基づく安全運転に努める必要がある。

 

 

空車時の事故率

タクシーの事故は、実車時よりも、空車時のほうが発生率が高くなっている

 

 

 

 

交通事故防止、事故発生時の対応

危険回避のための心構え

・自動車の運転に伴う事故発生の危険性は常に存在するが、タクシーの運転は、その業務の特性から事故の危険性も高いと言える。

・自動車の運転には、人の生命を奪うような大きな危険が常に存在していることを、厳しく自覚することが大切である。

 

 

交通事故の場合の措置

軽微な事故であっても、警察に届け、お互いに、車の番号、住所、氏名、電話番号及び事故の時間と場所等を確認する。

 

 

 

 

過労運転の防止等健康に関する知識

・一般的に自動車の運転をするときには、自動車内の閉鎖された環境によって自制心が弱くなり自己中心的な行動に出やすくなると言われている。

・乗客を輸送するタクシー運転者にとって、安全輸送が最大の使命であり、一般運転者が陥る「急ぎ」「焦り」「怒り」の感情を克服しなければならない。

 

 

 

接遇

接客についての基本的な心がけ

乗客に好感を与える態度

乗客に好感を与える態度は、初対面の目上の人に対する気持ちで、言葉ははっきりと簡潔に、返事は明るく、親しみと礼儀を保ち、笑顔で対応し、いつも感謝の気持ちを忘れないようにすることである。

 

 

服装・身だしなみ

タクシー運転者は、乗客が一目見て信頼感、安心感が持てるような、清潔できちんとした服装と身だしなみで対応する。

 

 

 

 

接遇に関する基礎知識

運賃メーターの操作

目的地に着いたら、速やかに運賃メーターを「支払」にする。

 

 

支払いの手順

目的地に着いたら、「お待たせいたしました。料金は◯◯円です」と、乗客に運賃を確認してもらう

 

 

乗車中の会話

乗客との会話内容は、プライバシーに配慮し、立ち入った話はしないようにする。

 

 

 

 

メーターの扱い

支払

目的地に着いたら、速やかに運賃メーターを「支払」にする。

 

 

予約車

運送の途中で乗客の都合により待機する場合は、「予約車」を表示する

 

 

ラジオ・エアコンの扱い

ラジオは、乗客の希望や好みに応じて操作する

・エアコンは、乗客に風が直接当たらないか、温度はちょうどよいかを確認する。

 

 

釣り銭の扱い

釣り銭はいつでも用意しておき、できるだけ素早く、間違いなくお渡しする。

 

 

ドアの扱い

乗客が乗降するときは、「ドアを閉めてよろしいですか?」等、声掛けをしてよく確認し、身体や衣装、手荷物をドアに挟んだりしないよう注意する。

 

 

 

 

タクシー運転者として特に身につけておきたい知識

タクシー内での忘れ物の取扱い

タクシー内の忘れ物を防止するためには、乗客が降車する際「お忘れ物はございませんか?」と一声掛けることが重要である。

 

 

乗客が眠ってしまったときの対応

・乗客が途中で眠ってしまうこともあるため、目的地、経路などの確認は乗車時に忘れずに行う。

・乗客を乗せ目的地に着いたところ、寝込んでしまった場合、起こすときは決して身体に触れないようにする

 

 

乗客とのトラブルの処理

乗客への接遇において、実際にトラブルが発生した場合には、誠実に、無用な議論を避け、寛大、冷静、迅速に処理するよう心がける。

 

 

乗客から無理を言われたとき

乗客から、違法な運転、談合料金、その他無理を言われたときは、事情をよく説明し、理解を求めるようにする。

 

 

故障したときの対応

乗客を運送中に車が故障したときは、乗客に事情をよく説明し、故障が直るまで待っていただくか、又は他のタクシーを斡旋する。

 

 

カーナビの活用

・カーナビの指示するコースを頼っていると、乗客の指示するコースと異なる場合があるため、苦情になりやすい

・カーナビは、あくまで乗客が経路選択する上での判断材料の一つであり、運転者からのアドバイスの一手段としての位置づけと理解して活用する。

 

 

障がい者割引への対応

・障害者割引の割引率は、運賃メーター器表示額(運賃の総額)から1割引きである(10円未満の端数は切捨て)。

・障害者割引の手続きは、身体障がい者等に交付される手帳の提示により本人であることを確認する。

 

 

バリアフリー対応に関する接遇

・介助を必要とする高齢者や障がい者に接する際には、どのような介助を必要としているか、最初に確認することが重要である。

・障がい者にといっても、内臓疾患、言語障がい、知的障がい、精神障がいなど、外見からは認識しにくい障がいもある。

・高齢者や障がい者の方は、乗り降りに時間がかかることもあるが、急かすような言動は好ましくない。

・高齢者や障がい者の方に、走行中不安感や恐怖感を与えないようにするためには、スピードは控えめにし、急ブレーキ・急ハンドルなどの急な運転操作を極力避けることが重要である。

・高齢者や障がい者の方に、走行中不安感や恐怖感を与えない運転操作をするためには、発進、停止、右左折の際は、事前に一声掛けて静かに行う。

・高齢者や障がい者の方との会話の手段として、文を書いたカードやメモ用紙などをあらかじめ用意するとよい。

・車いすをトランクに収納する際には、壊したり傷をつけたりしないよう、丁寧に扱う。

・視覚障がい者が乗車中、ブレーキをかける場合は「信号が赤なので停まります」等の道路状況を説明することで、乗客の不安が軽減される。

・視覚障がい者や高齢者(特に夜間など)には、「◯◯円お預かりしました」と、受け取った金額を確認すると間違いがない。

・妊婦の方は、大きなお腹でバランスを崩しやすいため、乗り降りの際には細心の注意が必要であり、乗車中は悪路による衝撃はもちろん、急ブレーキ・急発進などは避けなければならない